都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップを作ってみて感じたこと
この度、都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップを公開しました。詳細については、「お知らせ」に記載をしましたので、そちらをご覧ください。ここでは、このマップを作成するにあたって思ったことを2つ書かせていただきます。
緊急性が高いからこそ「オープンデータ」で
今回、都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップを公開するにあたり、一次ソースとして厚生労働省のホームページ、内閣府のページ、各自治体(都道府県・政令市)のページを参考にしました。最も情報が集約されているのは厚生労働省のページですが、それでも「新型コロナウイルスに関連した患者の発生(n例目)について」というタイトルで、基本的な情報についてはテキストベタ打ちというスタイルです。また、このn例目というのが味噌で、必ずしも通番になっていません。これは、無症状病原体保有者が陽性反応により入院した後に症状を発症するなどして内々に採番されるケースがあったためです。また、感染症患者に対する採番については、厚労省の「n例目」のほか、厚労省が内閣府に設置された対策本部に提出した書類では「A-1」「B-1」などの方法で採番をしており、一貫性がありません。もちろん、都道府県・政令市単位で公表している症例の採番と国の採番もリンクしていません。政令市(名古屋市)のプレスリリースは、少なくとも厚労省ではPDFをJPG化して貼り付けているだけでした。
新型コロナウイルスの流行は、「潮目が変わった」と言われ、特にこの週末では大きな対策の変更に厚労省をはじめとする官僚が大きなご苦労をされていることは承知の上で指摘しますが、こういう時こそ公開する情報は「オープンデータ」としてできる限り整形整備して公開するべきです。
米国や中国は中央集中的に疾病を管理するセンターがあり、広報を一元化しています。特に中国では、今回私たちが利用したGISのプロパイダであるEsri China社と中国疾病管理予防センター(Chinese Center for Disease Control and Prevention、中国 CDC)が協働して、リッチなダッシュボードを公開しています。
また、これに先だって米国ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター (CSSE) も、Esri社のOperations Dashboard for ArcGISを利用したダッシュボードを公開しています。
情報を公開していくにしても、「公開して終わり」ではなく、公開された情報がどのように広く国民に伝わるか、また利用してもらい関心を惹き付けられるかを意識することが、オープンデータ化のCoreだと考えています。これら中国や米国の事例を見れば、本来私たちが制作するようなページは、情報の信頼性という観点から政府(とりわけ今回の事例であれば、内閣府や厚生労働省)が制作して公開するべきです。また、それが難しい場合でも、公開した情報を正しく利活用してもらうためにも、オープンデータとして加工しやすい形で公開すべきでしょう。幸い、在宅勤務などIT業界ではコロナウイルスの流行に対応した企業が多く出てきています。人手が足りないときだからこそ、加工しやすい形で公開することで、ホワイトハッカーによる様々なソリューションが出ることに期待をしてもよいのではないのでしょうか。今後の流行に備えるという意味では、(批難されることを恐れずに言いますが)例えばオープンデータに加工した情報を利用したオンラインブートキャンプや、オンラインハッカソンなどがあってもいいのではないのでしょうか。瞬発力が問われる事態だからこそ、今行政が何をするべきか、考えさせられる事例でした。
信頼性の担保に向けて
オンラインマップでこういった情報集約を行って公開するのは、実に9年ぶりです。9年前、東日本大震災(2011.3.11)の時に「東京都内避難場所」というGoogle Mapを公開して大変多くの方にご利用頂きました。アクセスカウンタを間違えてリセットしてしまいましたが、おおよそ200万アクセスほどがあったことを記憶しています。
この時は「多くのアクセスが来るだろうから、Google Mapであればサーバーは落ちないだろう」「個人がうちの自宅に女性だったら避難してもらってもいいですよ、などは危険なので公開しない」などの配慮はしましたが、「情報の信頼性」「情報の最新性」という観点から大きな失敗をしました。この地図をみて、これから向かう避難場所を選んだ方が、スマートフォンの電源を落として数時間も歩いた結果、その間に避難所が閉鎖されていたなどのケースがあり、翌日私の携帯の留守番電話には罵詈雑言やらクレームやらが大変多かったことを記憶しています(感謝の言葉も少なからずあったことが救いでした)。
当時はtwitterで避難所を追加するたびに「追加した避難所」をつぶやくなど、情報を追加していくことを心がけていましたが、一次ソースへのリンクや最終更新日時などの観点に不足があり、途中で共同編集者をお願いしたものの、十分に更新できなかったことが悔やまれました。
今回、都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップの作成にあたっては、もちろん十分に情報の信頼性や正確性に万全を期していますが、誤っていることがあるかもしれません。そこで、(DashBoardという性質上、大変狭い画面とはいえ)一次ソースへのリンクを必ずつけることと、最終更新日を公開することにはこだわりました。今後もできる限り情報の信頼性や正確性に気をつけて、情報発信をしていきたいと思います。
1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。
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