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東京五輪中止の場合の衆議院解散シナリオ

 衆院解散(第49回)のシナリオについてはこれまでも何回か述べてきましたし、多くの識者・業界関係者による考察が出ています。ところが東京五輪が2020年に行われる前提のものや、2021年に延期されるという前提(現在はこの状況だからある意味現状では正しい)のものはあっても、五輪が中止となった場合の衆院解散シナリオが無いことに気付きました。そこで、東京五輪が中止となった場合の衆院解散シナリオについて考えたいと思います。

 現在のところ、2021年7月に開幕する予定の五輪ですが、開催可否は結局のところIOC(国際オリンピック委員会)によって決まります。これまでの延期の経緯から考えて、日本政府の意向や東京都の意向が強く反映できるようなパワーバランスにはもはやないでしょうから、国際世論がそのまま反映されることになるでしょう。2021年も「再延期」とすることについては、既にIOC幹部(ピエールオリビエ・ベケール委員など)が「開催か中止かの2択」と述べていることが明らかですし、2024年パリ五輪へ照準を合わせる時期でもありますから、ありえないとの見方です。

 問題は、五輪の開催可否(今回は中止のシナリオなので、中止)の意思決定がどのタイミングでなされるか、でしょう。複数の報道によれば、今秋、今冬、来春との報道が出ています。様々な競技の予選をどうするか、本来予定されていた関連イベントの実施可否などを鑑みれば、来春では遅すぎるでしょう。ただし、新型コロナウイルス感染症が冬に始まったことを考えれば、春にどの程度収まるのかを注視したいという考えもあり、現時点で「今秋、今冬、来春」の中から決定的な時期は未だ掴めません。

 五輪が中止となった場合の経済的な影響はどの程度でしょうか。インバウンド施策の大幅な見直しが確実視される中、これらの施策を頼りとしていた産業は、頼みの綱が切れてしまうことで再度の不況(不況の第二波)がやってくることが考えられます。特に宿泊業、運輸業、飲食業などは第二波にどこまで耐えられるでしょうか。また、今秋や今冬の意思決定となった場合には、令和2年ないしは令和2年度の経済指標(年単位)が歴史的な悪化を記録することは間違いなく、「アベノミクスの恩恵」を政策実績として打ち出してきた安倍政権をはじめ与党にとっては厳しい選挙戦になることが考えられます。

 とはいえ解散権を握っているのは安倍首相です。選択肢のない衆院解散は苦し紛れや守勢の選挙と捉えられ、それだけでマイナスの材料になる可能性があることから、東京五輪中止のシナリオがある程度現実的になった段階で早期解散を採る可能性が高まっているのではないのでしょうか。「五輪中止」という衝撃的事実を国民ひとりひとりが受け止めることになりますが、この受容の段階をキューブラー=ロスの『死の受容』と併せて考えてみると、その衝撃を「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」というプロセスで受け入れていくはずです。具体的には、五輪中止を受け入れずに国際世論に対する否定的感情や、IOCをはじめとする国際世論(もしくは一部のIOC役員?)に対する怒りとなり、そのうち五輪に代替する大会の開催などの「取引」(余談になりますが、夏の甲子園やインターハイを中止しても都道府県単位で代替大会を実施する都道府県が多いことが、この「取引」の最たる例だと考えています)が行われ、その経済的効果の無さや喪失感への気づきから「抑うつ」となり、最終的に受け入れる「受容」になるという過程を踏むはずです。この時間的経過から合わせれば、悲しみの状態(否認の直後や怒りから取引の間、受容の手前まで)においては、将来に対する失望感や野党による政府の無策の指摘が選挙を支配する可能性があり、リスクと言えます。そのため、この受容のプロセスに入る前に選挙を行ってしまう(言い換えれば、IOCによる「五輪中止」の意思決定を日本政府が認める代わりに、その前に衆院解散総選挙を行うというバーターで決着を仕掛ける)か、東京五輪中止が多くの国民に受け入れられて、「これで良かったのだ」という気持ちになってからという2択なのではないのでしょうか。

 実際のところ、後者の状況(受容の段階)になるまでは、相応の時間が必要だと思いますし、それまでの間に経済的な状況がどれだけ悪化するか(もしくは改善するか)は未知数です。そのようなギャンブルかつタイムリミットの迫った選挙を採るメリットは少ないことからも、IOCによる内々の意思決定の直後かつ発表の前、すなわちこの場合、最短では今秋臨時国会開会直後から11月頃の間には解散が行われることになるのではないのでしょうか。まずはIOC各委員のコモンセンスが成立する過程である現在の各委員の考えや国際世論形成に注目です。

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