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五輪延期が濃厚の中、衆議院解散総選挙はいつ行われるのか?

新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、東京五輪の開催延期が濃厚となってきました。選挙コンサルタントとして気になるのは、では「五輪後」と言われていた解散総選挙は、いったいいつになるのか。そしてその場合はどういうシナリオとなり、与野党いずれに有利になるのかです。状況が非常に流動的な中で予測を立てることは困難ですが、このタイミングでのシナリオという意味でまとめてみました。

シナリオ1 五輪は予定通り実施、衆院解散はオリパラ直後

衆議院解散が最も早いシナリオとして考えられるのは、新型コロナウイルス感染症の拡大が今後数週間で最小限に抑えられ、東京オリンピック・パラリンピックも予定通り挙行されることとなり、世界全体での感染症拡大も(今が悪夢を見ていたかのように)急速に収束を迎える場合です。この場合、日本経済に与えるダメージは(今でも十分に大きなダメージではあるものの)、それでも最小限にとどめることができるでしょうし、日本国内における感染症収束の成果を前面に出した与党の選挙戦が展開されることになります。場合によっては東京都知事選と同日程にすることで、東京をはじめとする日本の安全性・健全性を政府・東京都がWアピールするような選挙戦になることも考えられます。一方、野党の選挙準備にはまだ時間がかかることも考えられることから、与党の圧勝に終わる可能性が高いでしょう。今年前半に政治資金パーティーを実施できなかった若手政治家にとっては、資金難での選挙を迎えることになるかもしれません。

しかしながら、現状においても海外のオリンピック委員会が既に1年以上の延期を強く訴えていることや、諸外国における新型コロナウイルス感染症の拡大が爆発的になっている現状を鑑みれば、このシナリオが現実になることは、もはや望み薄どころか全くないと言っても過言ではありません。

シナリオ2 五輪は秋に延期、衆院解散は今冬

 次に考えられる衆院解散の最短シナリオは、オリンピックの開催が数ヶ月単位の延期となり秋頃に実施されるケースです。パンデミックが早期に収束するという予測されて数ヶ月単位での延期で済めば、オリパラに関連する経済的損失は最小限に収まるものと考えられます。日本経済に与えるダメージは「シナリオ1」よりは大きいですが、年内開催となれば東京五輪の開催までに一応のV字回復カーブを作り上げることになるでしょう。

選挙戦としては、結果的に今年中に予定されていた東京五輪自体が開催されることによって、政府の感染症収束にかかる各種施策が成功したと評価され、与党は都市部や若年世代を中心に票を集めることができるでしょう。一方で、インバウンド施策の恩恵を受けるはずだった観光地などのコロナの爪痕が深い地域を中心に、経済施策の失敗を問う自営業者の声が大きくなる可能性もあり、従来の組織票であった自営業者の支持を失う地域や団体も出てくるでしょう。近年、労働組合の結束力低下が叫ばれていますが、労働者の賃金保障や休業補償に対する施策が不十分とみなされれば、一部の業界において労働組合の組織力が再興する可能性も秘めています。れいわ新選組が擁立した社会的弱者などのクラスタが、国の保護・保障の枠組みから外れるようなことがあれば、彼らが存在感を増す可能性もあります。特に今回の新型コロナウイルス感染症では、フリーランスの休業補償、重度障害者への支援などへも注目が集まっていることから、支援の網から外れるクラスタが取り残されるようなことがあれば、そのクラスタが集票力を持って選挙戦で存在感を増すシナリオも考えられます。さらに、11月上旬には大阪都構想に関する住民投票が予定されており、その住民投票と時期が被れば日本維新の会が関西ではさらに躍進するでしょう。ただし、各政党に影響のある事象について考えてきましたが、メジャーな流れとしては大きく変わりませんから最終的な議席は現在とさほど変わらないか、与党やや減、野党やや増程度になると思われます。

しかし、「シナリオ2」についても、現状の新型コロナウイルス感染症の蔓延状況を鑑みれば、望みは薄いでしょう。特に東京五輪にかかる代表選考イベントが各地で無期限延期になったり中止になっている状況から、今年中に実施できないシナリオ3以降が濃厚とも言えます。

シナリオ3 五輪は来夏に延期、衆院解散は今冬から来春

東京五輪の延期は確実であり、その延期先は来年以降という見方が増えています。その中で最も早く選挙戦を迎えるとすると、秋までにコロナの猛威が去って、今冬もしくは来年頭に解散総選挙を行うケースが考えられます。12月ないしは1月の冒頭解散といったケースです。

東京五輪が1年延期になった場合の経済に与える影響について、まだ具体的な予測が出ていません。ただし、シナリオ1・シナリオ2と比べても不確実性が格段に上がることや、感染症自体の再燃も懸念されることから、大きな回復は期待できないでしょう。また、12月や1月となると、新型コロナウイルス感染症の発生からちょうど1年となり、同じ季節ということで国民の警戒が強まることが考えられます。経済の低迷が長引けば、これまで与党が実績として打ち出してきた各種指標にも影響を与えます。特にGDPやGPIF運用益といった指標は、この数年分のプラス分を消し去るほどのマイナスとなっている可能性が高く、選挙戦において実績的な訴求を行うことが困難になるとも言えるでしょう。野党にとってはこれらが攻撃材料になるわけですが、一方で選挙準備に与えられる時間も決して十分とは言えず、野党統一候補といった調整がどこまで現実的に行われるのかが鍵となります。その他はシナリオ2に準じますが、仮に解散風が吹き始めてから投開票までの数十日の間に、コロナ再燃やクラスタの発生ということになってしまうと、政府対応の一挙手一投足がそのまま内閣支持率に反映されるような事態になることが想定されます。 一般の選挙と異なり、内閣が自らの意思・タイミングで解散をするのが総選挙ですから、民意を問う解散という行為とコロナ再燃リスクとを天秤にかけて果たして解散が必要だったのかどうかという議論を呼ぶ可能性もあり、 コロナの再燃が現実になってしまった場合には与党の思わぬ議席減という結果を招くことも考えられます。

シナリオ4 五輪は来夏に延期、衆院解散は五輪前

 シナリオ3では触れませんでしたが、そもそも五輪を来年夏に延期した場合、そのスケジュールはどうなるのか、という問題があります。というのも、五輪の花形競技とも言える陸上は、「世界陸上」という五輪の次に大きな大会が隔年(奇数年)実施されており、2021年はアメリカ合衆国で8月6日から8月15日で実施される予定だからです。東京五輪は2020年7月24日から8月9日の予定で実施されるはずでしたから、そのまま1年順延するとこの世界陸上と重複することになります。(また、世界水泳選手権も2021年7月16日から8月1日という日程で、日本・福岡での実施が決まっています。)パラリンピックのことも考えると、ちょうど1年の順延は現実的にはあり得ないといえます。そうなると、もう少し早いタイミングでの実施か、もう少し遅いタイミングでの実施か、もしくは「世界陸上」「世界水泳」を玉突きのように変更するかというオプションになります。

 いずれにしろ、選挙をその「来年夏の五輪」の直前に実施するケースが「シナリオ4」です。具体的には、まず東京五輪の延期先が仮に「ちょうど1年より少し早めに延期」の場合、梅雨入り前に全ての日程を終わらせるのであれば4月末か5月頭から五輪を開催して6月頭に終えるパターン(1924年のパリ五輪は、開催期間は長かったものの「5月4日」スタートだった)が考えられます。この場合、選挙は4月上旬までに行うことになるでしょうから、令和3年度予算成立と同時に解散となるでしょうか。

また、仮に「ちょうど1年より少し遅めに延期」の場合、世界陸上などが終わった後に開催するパターン(8月後半か9月に五輪を開催、あるいは1964年の東京五輪と同じように10月開催)が考えられます。この場合は、7月後半か8月上旬の選挙が想定されます。

選挙への影響はどうでしょうか。コロナがほぼ完全な収束を迎えていれば、仕切り直した東京五輪を迎えるにあたって政府与党は安心安全とコロナ克服を訴えるキャンペーンを内外に強く訴えることが想定されるほか、国民全体にもコロナに打ち勝った結果としての五輪としての祝祭的な歓迎ムードが広がる可能性もあり、全体的には与党に良い影響を与える可能性があります。一方で経済への悪影響は「シナリオ1」「シナリオ2」よりも格段に大きくなっているほか、野党の選挙準備にも十分な時間が与えられることになり、選挙を双方が万全な状態で迎えることができるのではないのでしょうか。また、このシナリオ4については、そもそもこの日程での東京五輪開催は、いずれも梅雨への懸念や米国主要スポーツ(NFL、NBA)の日程の影響を受けることが既に指摘されており、現時点では成立する可能性が低いとされています。

シナリオ5 五輪は来夏に延期、衆院解散は五輪後

 シナリオ5は、具体的には「8月後半か9月に五輪を開催し、その直後に解散総選挙」です。シナリオ4の後者(「7月後半か8月上旬の選挙、8月後半か9月に五輪を開催」)と、このシナリオ5の違いは、五輪前か五輪後かという点はもちろん、自民党総裁選との関係にもつながります。

安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は2021年9月30日です。従ってシナリオ4の後者のパターンでは、仮に与党が勝利した場合でも自民党総裁としての安倍首相の任期は残り1ヶ月程度となりますから、総選挙で与党が勝利した場合、安倍首相が総理に指名されたとしてもすぐに総裁選が行われるというスケジュールになります。これでは、政策実現の公約の顔と、政策実現を実際に行うトップが変わる可能性があることから、批難を受ける可能性があります。よってこの場合に考えられるのは、安倍首相が総裁を辞任し、総裁選を早期に実施した上で解散総選挙を迎えることですが、総理総裁一体でこれまで長くやってきた自民党が、夏に安倍総理総裁としてオリパラを迎えた後に、総裁選と衆院選を短期間で実現することはできるでしょうか。 自民党総裁選が党員投票も含め大々的に行われることになれば、国民の関心を引き寄せて自民党に対する支持は一時的に増えることが予想されます。一方、総裁選が後腐れ無く終わる保証はどこにもなく、総裁選に敗退した陣営・派閥が党を割るような事態になれば、一気に自民党の分裂に繋がる可能性も孕んでいます。 与党の舵取りが選挙戦全体への影響を大きく左右する形になる一方、既存野党は存在感をどのように訴えるのかが鍵となります。

シナリオ6 五輪は来夏に延期、衆院解散せず任期満了

衆議院議員の任期は2021年10月21日です。自民党総裁の任期満了からわずか3週間で衆議院議員の任期も満了することとなります。解散せず任期満了の場合、任期満了から起算して最短での選挙は2021年10月5日(火曜)公示、10月17日(日曜)投開票です。仮のこの日程の場合、自民党総裁選は少し前倒しで実施しなければ、(各種印刷物や素材準備などの)選挙準備が間に合わないことになるでしょう。従って、少なくとも2021年の5月から6月まで解散をしなかった場合、安倍総理は総裁選の前倒し実施(すなわち総裁としての辞任)を選択する可能性が高いとも言えます。

任期満了まで選挙を引っ張った場合は、やはり「総理は解散をする余裕がなかった」という見方が大勢になると考えられます。また、自民党の新しい総裁に対する期待値が高まっている一方、実績が未知数であることから、選挙戦における政策訴求についても不十分となる可能性もあります。シナリオ5でも触れたとおり、総裁選のしこりが残れば自民党票が割れる可能性もあります。また、新しい自民党総裁と公明党との協力体制がどこまで確立するのかも不透明と言えます。

東京五輪の開催に伴う経済効果が著しくなかった場合、または国民が感じる五輪の経済的恩恵が少なかった場合には、五輪がピークとなって経済的な成長がマイナスに転じる、不況に繋がるという不安が高まり、結果的にこれまでのアベノミクスをはじめとする政府与党の経済施策が失敗だったのではという結論に世論が陥れば、野党有利となる可能性もあります。特に自民党が新しい総裁の下で一致団結できないような状態に陥ったり、新しい総裁に対する国民の期待度が高まらないような状態に陥れば、国会の勢力図が変わるようなことになることも考えられます。

シナリオ7 五輪は2年後に延期、衆院解散は今冬から来春

実は個人的には最も可能性の高いシナリオが、この「シナリオ7、8」なのでは、と考えています。五輪の延長に関しては、シナリオ5,6にも増えたように翌年は既にイベントが決まっており、2年後に五輪の夏冬同年開催とすることの方が現実的ではないかという見方があります(昔は五輪も夏冬同年開催の時代がありました)。五輪を延期した場合、当初の五輪会期まではなかなか解散しにくいとも思いますので、現実問題としては衆院解散は今秋以降になると思います。過去3回の選挙は12月、12月、10月といずれも秋〜冬に実施され、いずれも自民党が選挙戦で勝った経験を鑑みれば、この10月〜12月に再度解散総選挙に踏み切る可能性は高いと言えるでしょう。

この場合、延期した五輪への期待はもはや低くなっており、景気低迷からのリカバリーも十分ではない可能性があることから、シナリオ2、3と同じような結果をもたらす可能性があります。もっとも、解散風から解散までの時間が短ければ、野党の結束がなされずに現状と変わらぬ議席となる可能性もありますし、景気回復が遅れて内閣退陣の要求が夏から秋にかけて続くようであれば、野党の選挙態勢構築が急速に進むことも考えられます。

シナリオ8 五輪は2年後に延期、衆院解散せず任期満了

 コロナの感染拡大から収束までの時間軸が見えない中で予測をするのは困難ですが、同様に「コロナ終息宣言」なるものを出すことも困難であることを考えれば、安易に解散総選挙を打って出ることのリスクは無視できるものとは言えず、やはり必要に迫られた選挙である任期満了を迎えるのが自然な流れだと考えます。この場合、重要なのは日本経済の疲弊と政治への期待と失望の割合です。まず五輪延期にかかる経済的な打撃は全てのシナリオの中で最も大きいと言えます。五輪を中止しないだけいいという見方もありますが、インバウンドに依存してきた産業が軒並み大打撃を食らった後に早々に復活するとは言えず、また株価がコロナ拡大前の状況に戻る望みも薄く、経済的な打撃を早期に克服できなければ、結果的に「アベノミクスは失敗」という烙印が押されます。加えて、有権者は自らの生活に直結する施策の評価には敏感です。従って、不況の影響を受けて失業する人や生活保護を受給せざるを得ない人が増えた場合には、彼らは政府の無策を嘆き、確実に野党の集票力に貢献することとなります。失業率や倒産件数、あるいは生活保護受給者数をモニタリングすることでこれらの予測はある程度可能です。衆議院議員の任期満了からオリンピックの開催まではほぼ1年近くに日数が空くことから、五輪への期待感もまだ十分には高まってるとは言えない温度感の中で、与党が国民に期待感を高める公約・政策訴求ができなければ、一気に過半数割れや下野の可能性もあると言えます。

以上、ここまで複数のシナリオを見てきました。今回は敢えて森友・加計問題など安倍首相の支持不支持に関わる他の要因を排除して分析をしましたから、これら別の要因が引き金となってシナリオとは異なる結果をもたらす可能性もあります。しかしながら、国民の不安が高まっている現状や今後の経済に対するダメージの大きさから、現時点において、 新型コロナウイルス感染症の長期化は政権にとってはマイナス材料となるだけでなく、自民党総裁の任期や衆議院議員の任期を鑑みれば、選択肢が少ない状態での選挙は与党にとってはマイナス、野党にとってはプラスの選挙になる可能性が高いとみています。 

 余談ですが、現金給付施策は仮に1人あたり数万円程度という施策だとするならば、内閣支持・与党支持に与えるプラスの影響は一時的であると考えます。ヘリコプターマネーはお財布に入って出た頃にはもう入った経緯を忘れていますから、選挙に与える影響は軽微でしょう。仮に消費税を一時的に減税や停止した場合で、かつその状況で選挙戦に入った場合の方が、選挙に与える影響(与党にプラス)は大きいと思います。

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